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高松高等裁判所 昭和63年(ネ)190号 判決 1994年8月08日

控訴人 国 ほか一名

代理人 高山浩平 栗原洋三 金子敏廣 渡辺英司 ほか六名

被控訴人 梶川彰 ほか六三名

主文

一  原判決中、控訴人ら敗訴の部分を取り消す。

二  被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

事実

第一申立て

一  控訴の趣旨

主文と同旨

二  控訴の趣旨に対する答弁

本件控訴を棄却する。

第二被控訴人らの主張

被控訴人らの主張は、次のとおり付加するほか、原判決中の事実摘示の当該部分と同一(ただし、右摘示中、以下に記するところと矛盾そごする部分は、以下のとおり訂正されたものである。)であるから、これを引用する。

一  長安口ダムの操作規則等の瑕疵について

ダムがその設置目的にしたがって適正に操作されるためには、その操作準則である規則等の内容自体が適正でなければならず、それが適正を欠くものであれば、そのこと自体がダムの設置管理の瑕疵に該当するというべきである。

すなわち、ダムの操作は、規則等に基づいてなされるものであるから、その規則等に欠陥があり、そのためにダム操作をする職員が適切な操作をすることが困難な内容となっている場合には、ダム自体が通常有すべき安全性を欠いているものというべきである。

そして、本件出水当時の長安口ダムにおける長安口ダム操作規則及び同細則(以下「規則等」という。)には、その内容自体に瑕疵があったもので、それが本件洪水時におけるダム操作の誤りを引き起こす原因になったのであるから、そのこと自体が本件ダム管理上の瑕疵に該当する。右規則等の瑕疵の内容は、原判決九丁裏七行目冒頭から一二丁裏一一行目終わりまでの記載と同一であるから、これを引用する。

二  本件洪水時における長安口ダムの放流量について

本件出水は、洪水時に長安口ダムにおいて一時的に少なくとも毎秒六〇〇〇立方メートルの大量放流をした結果発生したものである。

被控訴人らは、国土問題研究会の調査等に基づき洪水時に長安口ダムにおいては一時的に少なくとも毎秒七〇〇〇ないし八〇〇〇立方メートルの大量放流をしたと主張するものであるが、仮に、控訴人ら提出の高橋保教授の意見書により、長安口ダム下流四〇〇メートルの地点で流速を毎秒四メートルであったと仮定してもその流量は毎秒六二八〇立方メートルとなり、このような大量放流が本件被害をもたらしたものである。

三  国家賠償法一条一項に基づく責任(選択的追加請求)

1  長安口ダム管理事務所長田中公廣(以下「管理事務所長」という。)の過失

(一) 本件洪水当時、同ダムの操作規則、同規程は計画最大放流量は毎秒五四〇〇立方メートルと定められていたが、管理事務所長は適切な予備放流をすることを怠り、前期規則等に定められた制限放流量をはるかに超える少なくとも毎秒六〇〇〇ないし八〇〇〇立方メートルの過剰放流(流入量を超える量の放流)をした。

(二) 長安口ダムにおいては、昭和四六年八月三〇日午前五時(以下、単に時刻のみ表記するときは、全て昭和四六年八月三〇日のそれである。)洪水警戒体制に入ったのであるから、管理事務所長は、洪水に備え徐々に放流を開始し予備放流水位(標高二二一・七メートル)を保って同ダムの治水容量六九〇万立方メートルを確保すべき義務があった。しかるに、管理事務所長は、午後零時三〇分まで発電用水量毎秒六〇立方メートルの放流しかなかったため、午前一一時五〇分ころには貯水位は予備放流水位を突破し、午後零時三〇分には標高二二三・六メートルに達した。その結果、治水容量の半分以上が失われ、前記の一時的な過剰放流を招いた。その具体的な過失内容は原判決一三丁表四行目冒頭から一五丁表一一行目終わりまでの記載と同一であるから、これを引用する。

(三) 前記のとおり放流開始の時期が遅れたため、午後一時の時点では貯水位が標高二二四・二五メートルまで上昇したのであるから、この時点で、管理事務所長としては過剰放流を避けるため治水容量を確保すべく適正な放流をしなければならないのに、午後三時まで漫然と自流放流(流入量に等しい量の放流)を継続し、予備放流水位を下げる努力をしなかった。そのため、前記のような一時的な過剰放流を招いた。その具体的な過失内容は原判決一五丁表末行冒頭から一七丁表二行目終わりまでの記載と同一であるから、これを引用する。

(四) 管理事務所長は、午後三時から午後六時四〇分にかけて過剰放流を行った。この放流は、この時期を誤ったものであり、また前記(二)及び(三)の適切な予備放流水位を確保しておかなかったことに原因がある。その具体的な過失内容は原判決一七丁表三行目冒頭から一八丁裏七行目終わりまでの記載と同一(ただし、一七丁裏七行目「必要であったかは疑問であり」を「必要はなく」に、同八行目「必要であるとしても」を「必要があったとしても」に同八、九行目「右ピーク時からはずらせるべきであったとの批判が可能である」を「右ピーク時を避けて放流すべきであった」に改め、一八丁表六行目「と考えられる」を削る。)であるから、これを引用する。

2  管理事務所長は、本件ダムの操作に従事する公務員であり、その職務を行うにつき前記のような各注意義務を怠った過失があるので、控訴人らは、国家賠償法一条一項に基づき被控訴人らの被った損害を賠償すべき義務がある。

第三控訴人らの主張

控訴人らの主張は、次のとおり付加するほか、原判決中の事実摘示の当該部分と同一(ただし、右摘示中、以下に記するところと矛盾そごする部分は、以下のとおり訂正されたものである。)であるから、これを引用する。

一  長安口ダムの操作規則等の瑕疵について(反論)

被控訴人らは、規則等の内容が不当であり、そのこと自体がダムの設置、管理の瑕疵に当たると主張する。

しかしながら、仮に、規則等の内容が不適切なものであったとしても、そのこと自体が国家賠償法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵を構成するものではないから、右主張は失当である。

また、仮に、国家賠償法二条一項の瑕疵を被控訴人らが主張するように解することができるとしても、規則等の内容は、適切なものであって、何ら不合理な点はなかったものである。

長安口ダムの規則等の定めは、その当時までに発生した洪水等の経験を基に、被害の規模、頻度、被害の性質、降雨状況などのあらゆる資料を検討して策定されたものであり、財政的、社会的、技術的諸制約のもとでの同種、同規模の河川及びダムの管理の一般的水準及び社会通念に照らして十分に是認し得る安全性を備えたものである。すなわち、長安口ダムは、昭和三一年完成後、長安口堰堤操作要領等によって管理され、毎秒五四〇〇立方メートル以上の洪水について洪水調節するものとされ、それ未満の洪水については調節の対象となっていなかったところ、その後、新河川法の制定を機に操作規則、操作細則、操作規程がそれぞれ定められ、那賀川の治水事業の遅延、ダム建設後の下流地域の都市化等を考慮して、毎秒五四〇〇立方メートル未満の洪水についても、長安口ダムにおける流入量が毎秒四〇〇〇立方メートルに達したときには、一定の割合による洪水調節を開始し、計画高水流量(河川の洪水による被害を防止又は軽減するための洪水計画の基本となる洪水を基本高水といい、基準地点の基本高水を河道、洪水調節ダムに配分したピーク流量を計画高水流量という。)毎秒六四〇〇立方メートルが流入するようになった場合は、毎秒一〇〇〇立方メートルをカットし、最大放流量を毎秒五四〇〇立方メートルとする定率・定量調節方式(洪水の流入量のうち一定の流量以上に達するまで流入量に対して一定の率で貯留を行い、ピーク時以降は一定量を放流する方式)に変更した。この変更は、よりゆるやかな条件設定のもとに、できる限り機動的な洪水調整を行い、未改修区間及び下流の主要な地域の洪水被害の軽減を図ろうとするものであって、社会情勢の変化等に対応させて、ダムの治水機能の拡大を意図した適切かつ合理的なものである。

二  被控訴人らは、本件出水時において、管理事務所長の長安口ダムの操作過程に過誤があったとして、これをダムの設置、管理の瑕疵に当たると主張する。

しかしながら、仮に、その主張するような過誤があったとしても、これらは国家賠償法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵に当たらないことが明らかであるから、右主張は失当である。

また、仮に、国家賠償法二条一項の瑕疵を被控訴人らが主張するように解することができるとしても、本件洪水時における管理事務所長のダム操作につき過誤はない。すなわち、

1  管理事務所長の午後一時一〇分ころの洪水予測と自流放流の正当性(被害発生の予見不可能性)について

(一) 管理事務所長は、午後一時一〇分ころにおいては、午前一〇時から午後一時までに長安口ダム上流域に一時間当たり平均四〇ミリメートルの降雨が続いていたことから、ラショナル式(公式法)によって計算し当面の洪水としては、二ないし三時間後に毎秒三八〇〇立方メートル程度の流入量があるものと予測し、更に、午前一一時一〇分発表の台風情報が午前六時二〇分発表のそれと同様「一八時ころ、四国西部に上陸の可能性があり、徳島県地方に最も接近するのは夜半」との内容であったので、降雨が強まるのは同夜半ころと想定し、その際の最大流入量は毎秒四〇〇〇立方メートル、その二割増としても毎秒四八〇〇立方メートル程度と予測した(原判決は、この時点で毎秒四八〇〇立方メートル程度の洪水が二ないし三時間後にあると予測した旨認定するが事実誤認である。)。

そして、この洪水に対して必要な洪水調節容量は、最大流入量を毎秒四八〇〇立方メートルとしても、約一〇二万一〇〇〇立方メートルであった。

(二) ところで、午後一時一〇分の時点において確保されていた洪水調節容量は約一六〇万立方メートルであって、二ないし三時間後に予測される毎秒三八〇〇立方メートル程度の洪水に対する前記洪水調節容量約一〇二万一〇〇〇立方メートルをカバーするに十分であり、また、同夜半に襲来することが予測された毎秒四八〇〇立方メートルの洪水に対する備えとしても十分であると判断したもので、右管理事務所長の判断は正当であった。

(三) したがって、午後一時二〇分から午後三時までの間においては、過剰放流をしてまで貯水位を下げて洪水調節容量を増やす必要は全くなく、午後三時から午後六時四〇分までになされた過剰放流について右の時点で予見することは不可能であったから、右の時間帯において管理事務所長が自流放流をしたことに過失はない。

(四) 予備放流水位を確保することの本来の意味は、予測した流入量に対して洪水調節ができる容量を確保するということであるから、放流開始の決定を午前一一時に行い細則九条二項の規定によって放流開始を午後零時三〇分にしなければならなかった結果、当初設定した予備放流水位を超えて貯水位を上昇させたとしても前記のような洪水予測の下では洪水調節能力を有していた以上、予備放流水位を超えて貯水位を上昇させたという一事をもって直ちにダム操作に過失があるとはいえない。

2  結果回避可能性について

午後一時一〇分の時点において、直ちに貯水位を予備放流水位まで下げる措置を講じたとしても、本件浸水被害の結果を回避できる可能性はなく、かえってより大きな被害をもたらす可能性があった。すなわち、仮に、

(一) 午後一時一〇分の時点において、本件出水時において実際に行った過剰放流の最大流量四一七・六立方メートルに近似する毎秒四〇〇立方メートルを一律に過剰放流して貯水位を下げる操作をするものとすると、貯水位を二二一・七メートルまで下げるには約三時間四〇分を要し、午後三時四〇分から午後三時五〇分までの最大流入時にも毎秒四〇〇立方メートルの過剰放流をすることになり、最大放流量は本件出水時の毎秒四七八〇・八立方メートルより更に毎秒二二六立方メートル多い毎秒五〇〇六・八立方メートルとなる。

(二) また、右時点において、洪水のピークと考えられていた同日夜半より以前の段階での当面の洪水のピークが午後三時五〇分ころと予測し、同時刻までに貯水位を二二一・七メートルまで下げる操作をするとすると、午後一時一〇分から午後三時五〇分までの間、一律に毎秒五四六立方メートルの過剰放流をしなければならないことになる。そうすると、本件出水時の最大放流量よりもさらに毎秒三七二立方メートルの過剰放流をする結果となる。

(三) 更に、午後一時一〇分ころの洪水予測として二ないし三時間後に毎秒三八〇〇立方メートル程度の流入量が予測されていたことから、流入量を毎秒三八〇〇立方メートルを限度とし、ゲート巻上能力の可能な範囲でできる限り早く貯水位を二二一・七メートルまで下げる操作をするとすると、おおむね午後二時三〇分ころまでに右水位まで下げることができるが、その際の最大過放流量は毎秒一三七〇立方メートルとなり、極めて急激な放流となる。

以上のとおり、できるだけ早く貯水位を下げようとすれば、放流量はより過剰で、かつ急激な放流となり、逆に、過剰放流量をできるだけ少なくしようとすれば、本件出水時とほぼ同じ結果となるか、あるいは過剰放流量が最大流入量と重なる時点においては、むしろより危険な結果となることが明らかである。このような状況の下でした管理事務所長の本件ダム操作は妥当なもので過失はない。

第四証拠<略>

理由

第一当事者

被控訴人らは、昭和四六年八月三〇日当時、徳島県の中西部に位置する剣山に源を発し、同県南部を東方に流れて紀伊水道に注ぐ一級河川である那賀川の中流部沿岸に位置する徳島県那賀郡鷲敷町の和食地区に居住し、若しくは事業場を有していた者であること、控訴人国は那賀川及び同水系中の古屋谷川など一級河川の管理義務を有し、前記和食地区から約三七キロメートル上流に設置された長安口ダムを控訴人県と共有していること、控訴人県は、長安口ダムを控訴人国と共有し、河川法九条に基づき知事がこれを管理していること、以上の事実は、当事者間に争いがない。

第二浸水被害の発生

<証拠略>によれば、和食地区は長安口ダムから那賀川の下流約三七キロメートルの右岸に位置し、比較的狭い山間の集落で、地形的には東側が低く水田地帯を形成し、中心部の住居、学校、工場、事務所などは、西側のやや高いところに位置していること、那賀川は同地区付近においてU字型に大きく蛇行し、地区の東側では、支流の南川及び中山川が合流し、那賀川に注いでいること、同地区においては、昭和四六年八月三〇日、台風の注意報が出されていたものの午前中は小雨が降った程度であり、那賀川の水量も普段のそれと変わりがなかったが、午後二時ころになってにわかに降雨が激しくなり、午後四時ころにまず東側の水田地帯が浸水し始め、その後急激に増水し、午後四時二〇分ころには西側の集落が浸水を始め、同日午後六時二〇分ころピークに達したが、この時点では、地区内の住居の中には床上浸水二メートルにも達した家も見られたこと、しかし、右を境に同三〇分ころには水は退き始め、同午後八時ころには完全に収まったこと、右出水によって、和食地区において床上浸水九二戸、床下浸水三六戸の被害が発生したことが認められ、これに反する証拠はない。

第三本件ダムへの流入量と放流量

<証拠略>によれば、長安口ダムへの流入量は、昭和四六年八月二九日午後九時に毎秒七二・七立方メートル、翌三〇日午前五時には毎秒二三一立方メートル、午前一〇時に毎秒四八七・六立方メートル、午前一一時に毎秒六二一・八立方メートル、午後零時に毎秒一三九八・四立方メートル、午後零時四五分に毎秒二二六二・二立方メートル、午後一時一〇分に毎秒二一九八・九立方メートル、午後一時四〇分に毎秒二四三一・四立方メートル、午後三時一〇分に毎秒三三一四立方メートル、午後三時五〇分に最大の毎秒四六〇六・八立方メートルを記録し、午後五時には毎秒四二七一・一立方メートルとなり、その後次第に減少し始め、同日夜半ころには毎秒一六五一・六立方メートルとなったこと、一方、放流は、三〇日午後零時三〇分までは、管理事務所長の判断で発電用として毎秒六〇立方メートルを放流しその余は全て貯留していたこと、午後零時三二分から毎秒二九〇・三立方メートルの放流を始め、午後零時四五分に毎秒一一六五・二立方メートル、午後一時一〇分に毎秒一九九七・三立方メートル、午後一時四〇分に毎秒二三七一・四立方メートル、午後三時一〇分には流入量を上回る毎秒三六四三・四立方メートル、午後三時四〇分に最大の毎秒四七二〇・八立方メートルを記録し、右の放流を午後四時一〇分まで続け、それ以後徐々に放流量を減じ、午後六時四〇分までは流入量を上回る量の放流をしたことが認められる。

なお、右長安口ダムにおける放流量については、被控訴人らにおいて乙一の一、二の記録は虚偽の記載がなされたものであると主張するが、採用の限りでないことは後に判断するとおりである。

第四本件浸水とダム放流の関係

一  長安口ダム下流域における降雨状況

<証拠略>によれば、昭和四六年台風二三号は、那賀川の上、中流域に五五〇ミリメートルを越える集中的な豪雨をもたらし、時間雨量一〇ミリメートル以上の継続時間は一三時間であって短時間に強い雨が降ったこと、特に洪水末期には、支流の古屋谷川を含む長安口ダム下流域において長時間にわたり、時間雨量四〇ミリメートルを越える豪雨が襲ったことが認められる。

二  そして、和食地区において浸水が始まったのは、午後四時であり、午後六時二〇分ころに最高位に達したのち午後八時ころには収まったこと、一方、長安口ダムからの過剰放流は午後三時一〇分から午後六時四〇分までであったことは前記認定のとおりであり、<証拠略>によれば、長安口ダムとその下流に位置する川口ダムとの距離は約二一・五キロメートルであり、川口ダムと和食地区との距離は約一五・五キロメートルであること、長安口ダムにおいて最大放流量を記録したのは午後三時四〇分の毎秒四七二〇・八立方メートルであり、川口ダムにおいて流入量がピークを記録したのは午後五時一五分の毎秒六七一〇・六立方メートルであること、長安口ダムから川口ダムに至る洪水到達時間(伝播速度)は約一時間三〇分であることが認められる。そうすると、長安口ダムとその下流の和食地区の距離は約三七キロメートルであるから、被控訴人ら主張のように洪水時の流水速度が洪水伝播速度に等しいか、控訴人ら主張のようにこれよりも遅いかはともかくとして、和食地区における水位の上昇による出水は、前記の長安口ダム下流域における降雨と長安口ダムからの放流が原因しているものと推認せざるを得ない。

第五国家賠償法二条一項に基づく請求について

一  長安口ダムの概要と管理、及び、洪水調節の概要と実情についての認定判断は、原判決「理由」欄二(三六丁裏九行目から四六丁裏七行目まで)の記載と同一(ただし、四四丁表八、九行目「定められる慣行が成立していた」を「定めて運用されていた」に改める。)であるから、これを引用する。

二  そこで、本件ダム設置、管理の瑕疵の有無について判断する。

1  ダム操作規則等の瑕疵について

控訴人らは、規則等の内容は、国家賠償法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵の有無と無関係である旨主張するが、ダムの操作方法や洪水調節容量等の規定内容が安全性を欠くものであれば、そのダムは恒常的に他人に危害を及ぼす危険性のある状態で供用されることになるのであるから、かかる操作規則等の瑕疵は、営造物の設置又は管理の瑕疵に当たると解するのが相当である。

控訴人らの右主張は採用できない。

そこで、被控訴人ら主張の当否について検討する。

被控訴人らは、<1>本件ダムは、利水目的を優先して治水目的を軽視した結果、洪水調節容量を有効貯水量の僅か一五・八パーセントに過ぎない六九〇万立方メートル(満水位標高二二五メートル、予備放流最低水位標高二二一・七メートル・規則六条、九条)に設定したこと、<2>予備放流水位を確保するための放流の原則について、「貯水位が標高二二一・七メートル未満にあるときは、貯水池から放流をしながら、またはしないで貯水池に流水を貯留し、貯水位が二二一・七メートルに達した後は、流入量に相当する流量を放流するものとする。」(細則九条一項二号)旨規定するが、右規定に基づくダム操作の実態においては、「放流をしないで貯水池に流水を貯留する」ことが原則となり、これによって、予備放流水位を確保することが著しく困難になること、<3>ダム操作規則等において、管理事務所長が洪水調節計画を立てるに当たって重要な洪水総量等の予測に関する確立された方式が定められていないことなど、ダム操作規則等自体に瑕疵があり、これらの瑕疵によって本件災害が発生した旨主張する。

(一) まず、洪水調節容量が六九〇万立方メートルに過ぎなかったことが、本件ダムの設置、管理の瑕疵に当たるとの主張について検討する。

多目的ダム等河川の洪水調節を目的とするダムの設置、管理の瑕疵の有無を判断するにあたり、洪水調節容量について、これが通常有すべき安全性を欠いていたか否かは、単に、当該ダムに関し定められた容量では洪水調節機能を果たせなかったこと、またはそのおそれがあったことのみを基準として判断すべきでなく、当該河川の特性、河川全流域の自然的、社会的条件、関連費用の経済性等あらゆる観点から総合的に判断して、河川管理上、その容量を拡大することが必要不可欠であることが明らかであり、これを放置することが我が国における河川管理の一般的水準及び社会通念に照らして河川管理者の怠慢であることが明白であるといえるような事情があったか否かを基準として判断するのが相当である。

本件についてこれをみるに、長安口ダムは治水及び利水目的をもった多目的ダムであること、昭和四六年当時、規則上、本件ダムの満水位は標高二二五メートル、洪水調節のための予備放流水位の最低限度は標高二二一・七メートルと規定し、洪水調節はその間の貯水容量六九〇万立方メートルを利用して行うことと定められていたこと、右容量は、長安口ダム所在地点におけるいわゆる百年確率(生起率百年に一度の降雨)に相当する洪水流量毎秒六四〇〇立方メートルのうち一〇〇〇立方メートルを本件ダムにおいて調節し、放流量を毎秒五四〇〇立方メートルとし、下流の治水基準点である古庄地区において計画高水流量毎秒八五〇〇立方メートルに抑えることを基本として決定されたものであることは、先に認定したとおりである。そして、<証拠略>によれば、本件ダムにおける治水と利水との容量比率の変更は、関係者の同意を必要とし、必ずしも容易でないことが認められ、これらの事実関係と先に認定した本件ダムの建設と那賀川の治水事業の経過等を総合すると、右の洪水調節容量は百年確率洪水流量を基礎とした合理的なもので、治水安全度に欠ける不当な容量と認めることはできない。他に、当時、洪水調節のための容量を拡大しなければならない差し迫った事情や、前記容量のまま放置したことが、当時の河川管理の一般的水準に照らして、河川管理者の怠慢であると評価されるような事情があったと認めるに足りる証拠はない。

被控訴人らの右主張は採用することができない。

(二) 次に、予備放流水位を確保するための放流の原則を定めた細則九条一項二号について判断する。本件災害当時、細則九条一項二号において「貯水位が標高二二一・七メートル未満にあるときは、貯水池から放流をしながら、またはしないで貯水池に流水を貯留し、貯水位が二二一・七メートルに達した後は、流入量に相当する流量を放流するものとする。」旨規定していたことは当事者間に争いがない。被控訴人らは、右規定は「放流をしないで貯水池に流水を貯留する」ことが原則となり、これによって、予備放流水位を確保することを著しく困難にしていると主張するが、ダムの管理は、予測の困難な多様な気象、水象状況のもとでなされるものであるから、ダムの貯水位、流入量等の実情に応じて、貯水池から放流をしながら予備放流水位に近づけるのが適切なときもあれば、放流しないで貯留するのが適切な場合もあることは明らかであって、右規定はそのことを前提としたもので、何ら不合理な規定ではない。昭和四八年に右規定を改正し、「またはしないで」との文言を削除した(<証拠略>)ことは当事者間に争いがなく、このことによって、一義的、画一的なダム操作が期待されることになるが、そうだからといって、前記旧規定が不合理で、本件ダムの管理上の瑕疵に当たるものと認めることはできない。

被控訴人らの右主張も採用することができない。

(三) 更に、流入量予測方式に関する規定上の不備について検討するに、被控訴人らは、昭和四六年当時、規則上、洪水総量等の予測に関する方式が確立されておらず、当時使用されていた総雨量と最大流入量の関係を予測するための規則添付資料(<証拠略>)についても、昭和二五年に襲来したジェーン台風時の総雨量と最大流入量の数値が使用されていないのは不当であり、この不備が本件において流量予測を誤らせた原因である旨主張する。しかしながら、<証拠略>によれば、本件ダム操作時、前記規則添付資料と同様の資料を使用して高水流量を予測していたこと、右の資料は、右ジェーン台風当時、那賀川においては流量観測所が設置されていなかったので、右台風時の長安口地点での高水流量は、小浜地点における観測水位から推算された同地点の高水量を、流域面積に基づき更に推算算出した数値を基にしたものであったこと、そのため、前記資料においては、これらの数値は参考に留め、より確実な実測値を資料として作定したものであることが認められる。したがって、ジェーン台風当時の数値を参考資料に留めたのには合理的な理由があり、これを不当ということはできない。

被控訴人らの右主張も、また採用することができない。

2  本件ダム操作の過誤について

被控訴人らは、管理事務所長が本件ダムの操作を誤ったために本件浸水が発生したものであり、この操作の過誤は、国家賠償法一条の問題となるのみならず、同法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵にも当たる旨主張する。

しかしながら、国家賠償法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠き、他人に危害を及ぼす危険性のある状態をいうのであり、被控訴人らの主張するような営造物管理者の事故発生時における当該営造物管理の過誤は、国家賠償法一条の問題となるにとどまるというべきであるから、被控訴人らの右主張は、主張自体失当というほかない。

第六国家賠償法一条一項に基づく請求について

一  昭和四六年の台風二三号襲来時における長安口ダムの具体的操作状況についての認定判断は、原判決「理由」欄三(四六丁裏八行目冒頭から五四丁表七行目「以上の事実が認められる。」まで。)の記載と同一であるから、これを引用する。

ただし、四八丁表二行目「前記気象情報をもとにした」を「前記気象情報をもとに従前から使用していた総雨量と最大流入量との相関図(<証拠略>)に基づいてした」に、四九丁裏八、九行目「管理事務所長は、」の下に「午前一一時の時点で、」を加え、五〇丁表二行目「措置にとりかかった」を「措置を取った」に、同所六行目「流入量は」を「流入量は、午後零時には、」に、五一丁裏三行目「二ないし三時間後」から同所五、六行目「判断した。」までを「前記二ないし三時間後に予想される毎秒三八〇〇立方メートルの流入があってもこれに十分対応でき、また、同夜半に予想される最大流入量毎秒四〇〇〇立方メートルが仮に二割増の毎秒四八〇〇立方メートルに増加したとしても、それに必要な洪水調節容量は一〇二万立方メートルであるから、これにも十分対処できるものと判断した。」に改める。

二  台風二三号襲来の際の本件ダムの具体的操作状況は、右に認定したとおりであるから、右認定事実に基づき、管理事務所長のダム操作につき被控訴人ら主張の過失が認められるか否かについて検討する。

1  被控訴人らは、管理事務所長が放流開始時期の判断を誤ったため、放流開始時には、貯水位が既に予備放流水位(標高二二一・七メートル)を超え、その結果洪水調節容量を大幅に喪失させたもので、このことが後の過剰放流の原因になった旨主張する。

先に認定した事実によれば、午前一一時におけるダムの時間平均流入量は毎秒六二一・八立方メートル、貯水位は標高二一九・八一メートルであったが、管理事務所長は、上流域の降雨の状況、貯水位の上昇速度などからおおよそ一時間半後に貯水位が予備放流水位(標高二二一・七メートル)に近づくものと予測し、午後零時三〇分に放流を開始する決定をしたこと、ところが右予測に反し、午前一一時五〇分ころには貯水位が予備放流水位を突破し、放流を開始した時点での貯水位は標高二二三・五五メートルに達し、その分洪水調節容量を減少させたこと、そして、予備放流水位(標高二二一・七メートル)を確保しておれば、後刻の過剰放流は避けられたことは明らかである。

しかしながら、管理事務所長が放流開始時刻を決定した経過をみるに、前記認定のとおり、管理事務所長は、午前五時洪水警戒体制を採った時点で、当時の台風情報等を参考にして毎秒三〇〇〇ないし四〇〇〇立方メートルの洪水を予測したこと、この予測は前記のとおり当時、それまでの流域における総雨量等を参考にして作成していた前記規則添付の資料1(<証拠略>)等によって予測したものであること、その後、午前六時二〇分に発表された台風情報(四号)に基づく洪水予測では、同日夜半に最大流入量は毎秒四〇〇〇立方メートルに達するものと予測したが、午前一〇時の時点では、まだ貯水位は標高二一八・七五メートルであり、予備放流水位(標高二二一・七メートル)を三メートル近くも下回っていたこと、午前一〇時以前一時間の本件ダムの上流域の雨量は平均約三三ミリメートルであったが、それ以前の降雨量は、二ミリメートルから九ミリメートルと少なかったことから右の降雨は一時的なものと判断し(右予測ははずれ、午前一一時から一二時までの間にダム流域には平均約三七ミリメートルの降雨(<証拠略>)があり、流入量は毎秒七七六・六立方メートルに急増した(<証拠略>。)、午前一一時になってそれまでの降雨、貯水位の上昇等により、おおよそ一時間半後に貯水位が予備放流水位(標高二二一・七メートル)に近づくものと判断して、午後零時三〇分の放流開始を決定したものである。被控訴人らは、管理事務所長としては午前一〇時の時点での判断としては、より安全性を重視して、それ以後も強い降雨が続くものと予測してダム操作をしておれば少なくとも午前一一時三〇分には放流開始ができたものであると主張し、<証拠略>には、右主張に副った記載及び供述部分がある。しかしながら、気象情報の把握とそれに基づく予測、とりわけ、特定の地域の時間的、地域的な降雨量を正確に予測することは甚だ困難であることを考えると右は結果論というほかなく、管理事務所長のダム操作とその前提としての気象、水象状況の予測判断が著しく不当とまでは認められない。

2  次に、管理事務所長が午後一時一〇分から午後三時まで自流放流して、予備放流水位(標高二二一・七メートル)を超過していた貯水位を維持した点について判断する。

午後零時三〇分に放流が開始され、午後一時一〇分頃には流入量と放流量がほぼ同量に達したこと、同時点における貯水位は標高二二四・二四メートルで予備放流水位(標高二二一・七メートル)を上回っていたが、管理事務所長はこれを下げようとせず、その後午後三時まで自流放流を続けたことは、前記認定のとおりである。

ところで、前記操作の経過で認定した事実と<証拠略>を総合すると、管理事務所長は、午後一時一〇分に流入量の予測を行い、午前一〇時から午後一時までの間に長安口ダム上流域には、一時間当たり平均約四〇ミリメートル弱の降雨が観測されたので、ラショナル式により二ないし三時間後に毎秒約三八〇〇立方メートルの最大流入量があるものと予測したこと、同時点における洪水調節容量は、満水位標高二二五メートルと貯水位標高二二四・二四メートルの差の一六〇万立方メートルであったが、規則一六条一号によれば、流入量が毎秒二〇〇〇立方メートルから毎秒四〇〇〇立方メートルに達するまでは自流放流する旨定めているので、前記二ないし三時間後予測される洪水についてはこれに対する洪水調節容量は十分確保されており問題にする必要がないと判断して自流放流を続け、また、午前一一時一〇分に発表された台風情報(第五号)は、進路、進行速度、降雨量等、依然として先の第四号のそれと変化はなかったので、同日夜半に最大約四〇〇〇立方メートルの流入があるとの予測を維持し、仮に右最大流入量が二割増の四八〇〇立方メートルに達したとしてもその洪水に対して必要な洪水調節容量は一〇二万立方メートル余りであるから、右洪水に対して前記の容量は十分対応できるものと判断し、敢えて貯水位を予備放流水位(標高二二一・七メートル)まで下げる措置を採らなかったことが認められる。

被控訴人らは、当時の降雨状況、台風の進路予報等から判断すれば、管理事務所長としてはますます激しい降雨があるものと予想し、自流放流になって以後予備放流水位(標高二二一・七メートル)を確保ないしこれに近づけるべく努力する義務があったのにその努力をせず、同時点における貯水位標高二二四・二四メートルを固定してしまったと主張する。なるほど、当時の降雨状況等からすれば、被控訴人ら主張するような予測をするのがより妥当であったといえなくはない(なお、控訴人らは、午後一時一〇分から過剰放流を開始して予備放流水位まで水位を下げることは、下流に対する影響が大きく不可能であった旨主張するが、下流に対する影響を与えないで徐々に、少しでも貯水位を下げることは可能であったというべきである。)。しかしながら、管理事務所長が、当時の気象情報、長安口ダム上流域における観測雨量、河川水位、ダム流入水量等の資料に基づいてした右の管理事務所長の予測判断は、それ相当の根拠に基づいてした判断であって、これが著しく不合理、不当なものということはできない。

被控訴人らの主張は、結果論の側面をもっていることを否定できない。

3  更に、午後三時から午後六時四〇分までの間の過剰放流について判断する。

まず、放流量について、被控訴人らは、午後三時から午後四時ころまでの間に、少なくとも毎秒七〇〇〇ないし八〇〇〇立方メートルを放流したもので、長安口ダム操作記録(<証拠略>)の記載は捏造されたものであると主張する。当裁判所も、右被控訴人らの主張の事実はこれを認めることはできないものと判断する。その理由は、原判決の理由中の当該部分と同一(原判決五六丁表四行目冒頭から六〇丁裏三行目終わりまで、ただし、五八丁裏二行目「この点に付いては」から同所三行目「記述をしている。」までを「川口ダムは規模が小さく、洪水のピーク時付近では貯水池として機能していなかった旨の木村教授らの見解をその限りでは支持している。」に改め、五九丁裏三行目「いわなければならない。」の下に「(なお、木村教授らの最大放流量算出にあたり、長安口ダムの最大放流時と川口ダムの最大流入時との間に一時間のずれがあることを前提として算出しているところであるが、証拠(<証拠略>)によれば、長安口ダムの最大放流時は午後三時四〇分から午後四時一〇分まで、川口ダムの最大流入時は午後五時一五分で、その間のずれは約一時間三〇分であることが認められ、その前提が必ずしも正確でないというべきである。)」を加える。)であるからこれを引用する。

ところで、被控訴人らは、当審において、控訴人ら提出の高橋保作成の意見書に基づき、当時の流速を毎秒四メートルであるとしても、その最大放流量は少なくとも毎秒六〇〇〇立方メートルを超える旨主張するが、右は、長安口ダム下流四〇〇メートルの有効断面積を被控訴人ら主張のとおりとして算出したものであるところ、高橋教授らは、右有効断面積自体について疑問を呈しているのであるからそのまま採用することはできない。

次に、同時間帯における過剰放流の当否について検討する。

午後三時一〇分から午後六時四〇分までの間、流入量に毎秒一〇〇ないし三〇〇立方メートルを加えた量を放流し、殊に、午後三時四〇分から午後四時一〇分までの間には、最大流入量を上回る最大毎秒四七二〇・八立方メートル(うち毎秒六〇立方メートルは発電用)を放流したことは前記認定のとおりである。

ところで、右のような過剰放流をした経過をみるに、徳島地方気象台が午後二時四〇分に発表した台風情報によれば、台風が徳島県地方に最も接近するのは同日夜半ころで、風雨は以後ますます強くなり、雨量は山岳部で三〇〇ないし四〇〇ミリメートル、平野部で一〇〇ないし一五〇ミリメートル、ところによりそれ以上の雨量が予想されるというものであり、管理事務所長は、右の予報に基づき、再度、今後の洪水対策を検討した結果、同夜半には計画規模の毎秒六四〇〇立方メートル程度の洪水が襲来するとの予測のもとに、この洪水を調節するため計画どおり毎秒一〇〇〇立方メートルをカットし最大放流量を毎秒五四〇〇立方メートル以下に押えるためには、洪水調節容量は四七〇万立方メートルを要すると算定されたので、これを確保するため貯水位を標高二二四・二五メートルから二二二・八メートルに下げることとし、午後三時一〇分から前記のとおり過剰放流を開始したものであることも、また、前記認定のとおりである。しかして、右管理事務所長の予測判断は、前記台風情報と、同時点までに記録した降雨量などから判断して不合理なものということはできない。

午後一時一〇分の時点において、右の過剰放流をしなければならなくなる事態に立ち至ることが予測されたものともいい難い。

以上1ないし3のとおり管理事務所長のその時々の個々のダム操作について検討しても、またこれを一連の操作として検討しても、その操作判断過程に過失があったと認めることはできない。

被控訴人らの右主張もまた採用できない。

第七結論

以上のとおりであるから、被控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないから棄却されるべきである。

よって、被控訴人らの請求を一部認容した原判決は失当であり本件控訴は理由があるから、控訴人ら敗訴の部分を取消し、被控訴人らの本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条、九三条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 上野利隆 渡邊貢 田中観一郎)

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